マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
201708<<123456789101112131415161718192021222324252627282930>>201710
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Yu (2011) Mergers and neutralization
最近読んだ論文に関する備忘録を。

読んだのは以下の論文。

Alan C. L. Yu (2011) Mergers and neutralization. The Blackwell Companion to Phonology. Blackwell.

書かれていたなかで興味をもったのは、以下の二つの話。

(1) Hyman (1976)

弁別的トーンの発生(いわゆるtonogenesis)には三つの段階がある。
Stage 1: voicingに伴う生理的なピッチの変動。
Stage 2: 上述のピッチが誇張される。
Stage 3: voicingの対立が失われる。

(2) Auditory category learningの知見(Goudbeek 2006, Clayards et al. 2008, Goudbeek et al. 2008)

聞き手はmultidimensional contrastsよりもunidimensional contrastsのほうを容易に獲得する。

---

(1)の話、韓国語(ソウル方言)の場合はどうなのだろうかと考えてしまいます。Stage 2から3に移行しつつあるところでしょうか。

(2)のような心理言語学と音声変異・変化の接点になりうるような話、最近とても興味があります。
スポンサーサイト

最近のプロジェクト
ふと気づいたのですが,最近ブログの更新をしていませんね。ちょっとだけ近況を。

今年度は科研が新たにとおり,茨城県の方言の研究を始めました。
プロジェクトの詳細は,筑波音声学・音韻論セミナー発表資料をごらんください。
(「詳細」と書きましたが,実はちっとも詳しくないです・・・)

Palatography Lessons
YouTubeでPalatography Lessonsという動画を見つけました。Palatographyというのは,簡単に言えば,何かの発音をしたときに舌がどこに触れるかを調べるというものです。そのための専用の機器もあったりしますが,ここで取り上げているのは,舌に墨のようなものをぬって発音しどこが黒くなったかを調べるという,ある意味原始的なやり方です。でも,たとえばフィールドワークで調査する場合など,こういう方法が有効だったりするわけです。

このビデオはSOASの人たちが作ったもの。見てるとなんだかとっても楽しそうです。












Phonetic segmentation
音声学における音響分析の大変さは,全く経験の無い人からは理解されにくいかもしれません。録音をとったら,あとはパソコンのソフトを使うとたちどころに結果が現れると思っている人もいるかもしれません。実際には全くそんなことはなくて,録音をとった後には様々な作業が待っています。

私が修士論文を書いていた頃は,音響分析ソフトとにらめっこしながら,測定箇所を一つ一つ見つけては計測し,記録をしていました。博士論文を書く頃にはちょっと進歩し,音響分析ソフト(私が使ったのはPraat)のスクリプト(簡易プログラミングのようなもの)機能を利用し,作業をある程度自動化するようになりました。

ただ,音響分析の作業において,重要でありながらどうしても自動化できない部分があります。それは,phonetic segmentation(いわゆる「セグメンテーション」),すなわち,音声資料中の分節音境界を画定するという作業です。たとえば,「おなかすいた」という発話の音声資料があったときに,o,n,a,k,a・・・という分節音間の境界が時間軸上のどこにあるかを判断していくわけです。全ての音声学的な音響分析においてセグメンテーションが必要なわけではありませんが,多くの分析において部分的にせよセグメンテーションの作業が伴います。

このセグメンテーションが曲者なのです。そもそも音声は時間軸を連続的に変化するものであって,明確な境界というものは存在しません。それでも測定のための便宜上セグメンテーションをするわけですが,そのためには基準が必要となります。

意外なことに,セグメンテーションのマニュアルというものは,これまでほとんどありませんでした。私が知っているのは以下の二つですが,どちらも概略的な話にとどまっています。


  • Turk, A., Nakai, S., & Sugahara, M. (2006). Acoustic segment durations in prosodic research: A practical guide. In S. Sudhoff, D. Lenertova, R. Meyer, S. Pappert & P. Augurzky (Eds.), Methods in empirical prosody research (pp. 1-27). Berlin: Walter De Gruyter.

  • 藤本雅子・菊池英明・前川喜久雄 (2006) 「分節音情報」 『国立国語研究所報告124 日本語話し言葉コーパスの構築法』 国立国語研究所.



そのほか,公開されていない内部用のマニュアルはいろいろあるかもしれません。また,職人芸的に人づてで伝えられているケースが多いかもしれません。(そのために,いろいろな「流派」がありそうです。)

そんな中,画期的かもしれない本の紹介がPhoneticaに出ていました。

Phonetica > Book Notice: Principles of Phonetic Segmentation

紹介されているのは以下の本。まるまる一冊,phonetic segmentationについて扱っているようです。

Principles of Phonetic Segmentation

Pavel Machač & Radek Skarnitzl (2009) Principles of Phonetic Segmentation. Prague: Epocha Publishing House.

私は上のPhoneticaの記事を読んだだけで,実際の本を手にしたわけではないので,本の紹介は書けません。紹介記事を読む限り,本には英語とチェコ語の例しか出てこないようなので,日本語を分析する人にとってどれだけ役に立つかはわかりませんが・・・ひとまず本を早く入手したいと思います。(・・・でも,チェコで出版された本は簡単に入手できるのだろうか・・・?)

---
ところで,セグメンテーションを自動化するという技術も実は存在します。ただ,音声学の研究において必要とされるような精度は,現状では残念ながら得られないように思います。今後技術が発展すればよいのですが・・・


社会音声学のトーク
次回の筑波音声学・音韻論セミナーは,社会音声学(sociophonetics)がテーマです。グラスゴー大学のJane Stuart-Smith氏が,マスメディアの言語変化への影響についてトークをしてくださいます。

2011年12月7日(水),午後1時45分からです。くわしくは以下のページを。

筑波音声学・音韻論セミナー

・・・って,この記事を書いているのは12月6日(火)なので,もう明日です。ブログでのアナウンスは直前になってしまいました。

copyright © 2004-2005 Powered By FC2ブログ allrights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。