マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
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『朝鮮語ソウル方言の韻律構造とイントネーション』
すっかり宣伝するのを忘れていましたが、昨年度末に私の著書が出ました。

朝鮮語ソウル方言の韻律構造とイントネーション朝鮮語ソウル方言の韻律構造とイントネーション
(2013/03/22)
宇都木昭

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(上はアマゾンへのリンクですが、出版社のサイトからも購入できるようです。)

まえがきには以下のようなことを書きました。長いですが引用します。




本書は、私が2005年に筑波大学に提出した学位論文「朝鮮語ソウル方言におけるアクセント句 ― 音響分析による再検討 ― 」を改訂したものである。

そもそも、私がこのような研究を志したきっかけは、筑波大学人文学類の学類生だったころに遡る。朝鮮語(韓国語)を学んでいた当時、ネイティブの先生からこんなことを言われたことがある。

「あなたの韓国語のイントネーションはプサン方言みたいよ。」

私としては、プサン方言を話しているつもりはなかったし、(プサン訛りの日本人というのも、それはそれで悪くないかもしれないが、)韓国で標準的と認識されているソウル方言のイントネーションを身につけたかった。しかし、私がこの言語を学習していた当時、ソウル方言のイントネーションや韻律の特徴について言及してある文献は、少なくとも学習者の目にとまるような語学書の中には存在していなかった。だから、大学院に入学し研究テーマを決めることになったとき、ソウル方言の韻律を扱おうと思ったのである。以来、大学院を修了するまで、一貫してこのテーマで研究を進めてきた。

本書はそのような経緯を持っているものの、学習者としての素朴な関心から始まったものとしては、最終的にずいぶん理論色の濃いものになったかもしれない。もし、かつての私と同じようにソウル方言のイントネーションについて素朴な関心を持った方々が本書を手に取られたとしたら、あるいは、そのような素朴な関心に応えたいと思っている語学教師の方々が本書を手に取られたとしたら、本書が学習者用の語学書でもなければ語学教師用の手引きでもなく、韻律に関する言語学的な研究書であることをご理解いただきたい。私としては、ソウル方言の韻律に関して、理論的研究と応用的研究の双方が互いに影響しあいながら発展し、その成果が様々なかたちで提供され実践されることを願っている。そのような方向に少しでも貢献できればと、この拙い本を公にする次第である。

* * *

本書は筆者の博士論文を土台としつつ、少なからぬ変更を加えている。最も大きな変更点は、博士論文の第2章「アクセント句の音声的特徴」を除いた点にある。これは、全体的な構成として、この章のみがやや異質な問題を扱っていたためである。

その他にも、文章や図に関して変更を加えた箇所がある。これらはいずれも、正確さ、わかりやすさ、読みやすさ、見やすさの観点から施したもので、本研究の議論の方向に影響を与えるものではない。

なお、一般に「朝鮮語」、「韓国語」、「コリア語」などのように呼ばれる言語に対し、本書では「朝鮮語」という名称を用いている。これは、大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国、その他いくつかの地域で用いられている言語変種を総称するものとして、日本の言語学で広く用いられている呼び方にならっている。そのうちで、大韓民国ソウル市で用いられている変種を「朝鮮語ソウル方言」と呼んでいる。

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テーマ:韓国語 - ジャンル:学問・文化・芸術

Phonetic segmentation
音声学における音響分析の大変さは,全く経験の無い人からは理解されにくいかもしれません。録音をとったら,あとはパソコンのソフトを使うとたちどころに結果が現れると思っている人もいるかもしれません。実際には全くそんなことはなくて,録音をとった後には様々な作業が待っています。

私が修士論文を書いていた頃は,音響分析ソフトとにらめっこしながら,測定箇所を一つ一つ見つけては計測し,記録をしていました。博士論文を書く頃にはちょっと進歩し,音響分析ソフト(私が使ったのはPraat)のスクリプト(簡易プログラミングのようなもの)機能を利用し,作業をある程度自動化するようになりました。

ただ,音響分析の作業において,重要でありながらどうしても自動化できない部分があります。それは,phonetic segmentation(いわゆる「セグメンテーション」),すなわち,音声資料中の分節音境界を画定するという作業です。たとえば,「おなかすいた」という発話の音声資料があったときに,o,n,a,k,a・・・という分節音間の境界が時間軸上のどこにあるかを判断していくわけです。全ての音声学的な音響分析においてセグメンテーションが必要なわけではありませんが,多くの分析において部分的にせよセグメンテーションの作業が伴います。

このセグメンテーションが曲者なのです。そもそも音声は時間軸を連続的に変化するものであって,明確な境界というものは存在しません。それでも測定のための便宜上セグメンテーションをするわけですが,そのためには基準が必要となります。

意外なことに,セグメンテーションのマニュアルというものは,これまでほとんどありませんでした。私が知っているのは以下の二つですが,どちらも概略的な話にとどまっています。


  • Turk, A., Nakai, S., & Sugahara, M. (2006). Acoustic segment durations in prosodic research: A practical guide. In S. Sudhoff, D. Lenertova, R. Meyer, S. Pappert & P. Augurzky (Eds.), Methods in empirical prosody research (pp. 1-27). Berlin: Walter De Gruyter.

  • 藤本雅子・菊池英明・前川喜久雄 (2006) 「分節音情報」 『国立国語研究所報告124 日本語話し言葉コーパスの構築法』 国立国語研究所.



そのほか,公開されていない内部用のマニュアルはいろいろあるかもしれません。また,職人芸的に人づてで伝えられているケースが多いかもしれません。(そのために,いろいろな「流派」がありそうです。)

そんな中,画期的かもしれない本の紹介がPhoneticaに出ていました。

Phonetica > Book Notice: Principles of Phonetic Segmentation

紹介されているのは以下の本。まるまる一冊,phonetic segmentationについて扱っているようです。

Principles of Phonetic Segmentation

Pavel Machač & Radek Skarnitzl (2009) Principles of Phonetic Segmentation. Prague: Epocha Publishing House.

私は上のPhoneticaの記事を読んだだけで,実際の本を手にしたわけではないので,本の紹介は書けません。紹介記事を読む限り,本には英語とチェコ語の例しか出てこないようなので,日本語を分析する人にとってどれだけ役に立つかはわかりませんが・・・ひとまず本を早く入手したいと思います。(・・・でも,チェコで出版された本は簡単に入手できるのだろうか・・・?)

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ところで,セグメンテーションを自動化するという技術も実は存在します。ただ,音声学の研究において必要とされるような精度は,現状では残念ながら得られないように思います。今後技術が発展すればよいのですが・・・


Selected Papers from the 2nd European Conference on Korean Linguistics
以前に参加した国際会議の論文集がようやく出版されたようです。
執筆者なのに何も連絡がなくて,インターネットでたまたま見つけたのですが・・・。

http://linguistlist.org/issues/21/21-2177.html

私の論文も無事おさめられています。
昔の所属で出ています。

Eli Fischer-Jørgensen
Eli Fischer-Jørgensenが今年2月に99歳で亡くなったそうです。Phoneticaに追悼記事が出ていました。

Eli Fischer-Jørgensenはデンマークの音声学者。トゥルベツコイやイェルムスレウが活躍していた時代をリアルタイムで知っていた人で,追悼記事は音声学・音韻論の歴史を見るかのようです。

音声学において多くの業績を残した学者なのですが,同時に有名なのが音韻論史を扱った『音韻論総覧』。私がお世話になったのは,もっぱらこちらの方です。ソシュール以前からはじまり,プラーグ学派や言理学,ブルームフィールド学派の音韻論がかなり詳しく扱われています。

音韻論総覧音韻論総覧
(1978/01)
エーリ・フィシャ・ヨーアンセン

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印象的だったのは,音韻論の歴史は螺旋的だという話です。ある理論における概念が,別の(より新しい)理論の中で批判され,でも似た概念がそのまた次の(もっと新しい)理論の中で現れることがよくあるといった話です。こうも言っています。

果して音韻論には進歩があったのか,あるいは進歩なるものが流行の変遷といったものにすぎなかったのではないか,という問いも発せられると思われる。しかし,この後の方の見解は,悲観的に過ぎるであろう。それぞれの新しい音韻論の傾向が,貴重な新しい洞察をもたらし,新しい展望を開いたことに疑いはない。(p.417f.)


音韻論の勉強というと,ともすればOT(最適性理論)から始まりかねない今日(それはそれでいいのですが),初期の生成音韻論までしか扱われていない上の本は古すぎるのかもしれませんが,単に古いといって切り捨てられないぐらい示唆に富む本だと思うのです。

Phonetic Analysis of Speech Corpora
Amazonでこんな本を見つけました。音声コーパスの分析に関する本のようで,もうすぐ発売されます。

Phonetic Analysis of Speech CorporaPhonetic Analysis of Speech Corpora
(2010/04/26)
Jonathan Harrington

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音声コーパスの分析には,少量の単語や文の音声学的分析とは違った考慮が様々に必要で,さらにいろいろなスキルも必要となってきます。それは私が知っておかないといけないことでもあるわけで・・・。

この本,すごく欲しいです。

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