マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
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『ハングルの誕生』
すでに読み終えてからだいぶ時間が経ちましたが,野間先生の『ハングルの誕生』を読んで思ったところを書いてみたいと思います。

ハングルの誕生 音から文字を創る (平凡社新書 523)ハングルの誕生 音から文字を創る (平凡社新書 523)
(2010/05/15)
野間 秀樹

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この本では,そのタイトルが示す通り,朝鮮半島で用いられている文字体系,ハングルの誕生が扱われています。15世紀,文字イコール漢字といってもよかった当時の朝鮮半島において,朝鮮語を書き記すためにハングルという文字体系が生み出された ― そのことが如何に革命的であったか ― このことを著者は,ハングルの生み出された時代にまるでタイムスリップするかのようにして描いています。

当時の時代にあってハングルがいかに新しいものであったか,そして,いかに考えぬかれて作られたものであったか,それを理解するには現代言語学の基礎が欠かせません。言い方を変えれば,現代言語学の観点から理解されうるようなものが,現代言語学の諸概念が存在しなかった時代に生み出されたことが,驚きなわけです。

新書という一般向けの本ではともすると,話をわかりやすくするために,説明をは極端に簡潔にしたり省いたりしかねません。しかし本書は,ちゃんと理解できるように,あるいは,ハングル誕生の驚きをしっかりと体感できるように,ハングルの仕組みとそれに関わる現代言語学の概念を一つ一つ丁寧に説明しているのです。

そういう意味では,この本は朝鮮語学(韓国語学)や言語学の入り口の役割も果たしているのかもしれません。ハングルへの関心をきっかけにして,朝鮮語学・言語学への関心へとつながるように。実際にこの本には,新書としては珍しく,詳しい文献案内が付されています。

本書を入り口として広がっている学問の世界 ― その中に身を置かせていただいている者のはしくれとして,自分も良い仕事をしなければいけないと,気が引き締まる思いがしました。
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テーマ:韓国語 - ジャンル:学問・文化・芸術

『韓国語発音ガイド ―理論と実践―』
韓国語発音ガイド―理論と実践韓国語発音ガイド―理論と実践
(2008/09)
秋 美鎬山下 佳江

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Choo & O'Grady (2003) The Sounds of Korean: A Pronunciation Guideの日本語版です。単純な翻訳ではなく,日本の学習者向けにかなりの修正と加筆がほどこされています。とくに注目すべきは,「第5章 リズムとイントネーション」という章が新たに加えられたこと。Jun Sun-Ah氏の韓国語イントネーション研究が紹介されています。

Jun Sun-Ah氏の研究に関しては,これまでにも私が書いたものとか,閔光準さんの「韓国語のイントネーション」(『音声研究』11巻2号,2007年)の中でも取り上げられていましたが,これらは主に専門家を対象として書かれたもので,学習者向けの教材の中で本格的に取り上げられたのは,日本では私が知る限りはじめてだと思います。さらに,私や閔光準さんが取り上げていなかったPark Mee-Jeong氏の境界音調(句末,文末イントネーション)の研究も取り上げられていて,かなり本格的なイントネーションの解説になっています。

学習者向けとしては理論色が強すぎるのではないかとも思えるのですが,そのへんは学習者の方々の感想を聞いてみたいところです。

残念だったのは,付属の音声DVDに入っている発音において,イントネーションが本文の説明と合っていない部分がかなりある点。たとえば,우리 작은 동생은が本文(p.116)ではアクセント句(本書の用語ではピッチ・フレーズ)一つとなっているのに対し,音声DVDの発音では二つになっていたり。どっちもありえる発音だと思いますが,本文と音声が食い違っていては,読者を混乱させてしまうのではないかと・・・。

まあ,こういったことは細かいことで,このような本が出たことは,歓迎すべきだと思います。



ところで,ほかにも最近韓国語の発音に関する本が出ています。以下の長渡さんの本。

韓国語の発音と抑揚トレーニング―今すぐ実行できるウラ技を大公開!韓国語の発音と抑揚トレーニング―今すぐ実行できるウラ技を大公開!
(2009/03)
長渡 陽一

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ここでもイントネーションにかなりページが割かれています。

あと,発音がメインの教材ではありませんが,今年出た前田さんの本でも,イントネーションのことが取り上げられていました。

韓国語上級への道―トレーニングノート韓国語上級への道―トレーニングノート
(2009/03)
前田 真彦

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新たな潮流なのでしょうか・・・。

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『アメリカの大学院で成功する方法』
アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書) アメリカの大学院で成功する方法―留学準備から就職まで (中公新書)
吉原 真里、Mari Yoshihara 他 (2004/01)
中央公論新社

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私が今いるところはアメリカではなくてイギリスですし,別にこれからアメリカの大学院に行こうと思っているわけでもありませんが,何となく気になって読んでみました。

アメリカの大学院に留学するところから,留学生活,そしてアメリカの大学で教員としてやっていくところまで,著者の経験にもとづいて書かれています。よく聞くことですが,アメリカの大学院は勉強がたいへんなようで。授業の課題として毎日約一冊のペースで本を読むことになり,さらに授業はディスカッション主体。「自分の知力と体力を二〇〇パーセント注いでも,翌日の授業のための課題を読み終えることもできないばかりか,必死に読んでいざ授業にのぞんでみると,ゼミでみんなが話していることがさっぱり理解できなかった。」(p.ii)著者は帰国子女で,おそらく英語はもともとかなり出来たんだと思いますが,そんな人がたいへんだったというと,私ぐらいの英語力だったらいったいどうなることか・・・。

もっとも,専門によってもかなり違うのだろうと思いますが。著者の専門はアメリカ文化研究。文学とも関係あるような分野みたいですし,読むことが全ての基本であるような分野なんじゃないかと推測します。私の専門,言語学ではどうなんだか・・・

ちなみに,私も今学期ここエディンバラで授業を二つ聴講しています。その印象は,上の話とはだいぶ違います。授業は講義で,先生が一方的に話すだけのもの。授業中活発に質問が飛び交うかというと,確かに質問をよくする人はいますが,それはごく一部の人で,大部分の人はとても静かです。リーディングの宿題は出ますが,量は一回がチャプター一つくらい。しかも,みんなちゃんと読んできているのかどうか疑問。私は授業中のリスニングにあまり自信がないので,わりとちゃんと読んでいますが,授業をちゃんと聞いていれば,宿題のリーディングを読まなくてもついていけるんじゃないかと思ったりします。まあ,著者のケースと私が聴講している授業はいろいろ条件が違うので,様子が違うのは当然といえば当然なのですが。私が聴講しているのは博士課程ではなく修士課程の授業だし,そもそもここはアメリカではなくイギリス。大学院のシステムがかなり違います。

さて,本の話に戻りますが,ひとつ興味深かったのは,博士論文のテーマを決める段階で「日本関係トピック」とどう折り合いをつけるかという話。「日本人であるがゆえに,なんらかの形で日本やアジアに関係した分野やトピックを専門にすることを,周囲に期待されがちなのである。」(p.105)これ,言語学の世界でもよくあることだと思います。

言語学の世界だと,例えば日本で英語学を専攻していた人が,アメリカの大学院の言語学科に入り,そこで日本語に関するテーマで博士論文を書くことが,とてもよくあります。指導教授からそうしろと言われるのか,あるいは,英語をテーマにしてもネイティブには太刀打ちできないと,自ら進んでそういうテーマを選ぶのか。当人たちは,どういう気持ちで日本語を研究テーマに選ぶんだろう?もともとは英語が好きで日本で英語学を専攻し,そして英語圏の大学院にまで留学したんだろうに。そんな疑問を,私は昔から持っていました。

そんなわけで,本を読みながらいろいろなことを考えました。アメリカの大学院の様子を(一般化はできないでしょうが,少なくともその一端は)垣間見ることができて,興味深かったです。

韓国語教育論講座,まもなく刊行
近々,くろしお出版から『韓国語教育論講座』というシリーズが刊行されます。情報が野間先生のページにアップロードされていました。

野間秀樹研究室(東京外国語大学) > 『韓国語教育論講座』のページ

全4巻で,第1巻は2007年4月に刊行されるとのこと。楽しみです。

なお,第1巻には私の論考も含まれています。「音響音声学からの接近」というタイトルで執筆しました(上のページから執筆者とタイトルの一覧を見ることができます)。内容は,音響音声学の方法論の基礎と先行研究のまとめ。特に,私がこれまで主に研究してきたソウル方言の韻律・イントネーションについて詳しめに扱ったつもりです。これまで専門的な学術論文以外では接することの難しかった情報をいろいろと含んでいると思います。

例えば,

・韓国語のイントネーションの特徴って何?
・発音をパソコンで分析するには何からはじめたらいい?

といったことから,

・韓国語の音声学研究では何が明らかにされ,何が今後の課題なのか?

といったことまで,役に立つ情報を提供できるのではないかと。手前味噌ではありますが…。

もちろん,限られた字数の中,書きたくても書けなかったこともたくさんあります。そういったことは,今後別の形で世に出していければと思っています。

それにしても,執筆者一覧を見ると,なんだか私だけういているように見えます。一人だけ所属が日本でも韓国でもないし,朝鮮語学・韓国語学の世界ではほとんど無名だろうし… 「誰だこいつ?」とか思われるかもしれません…。

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マインドマップ
研究をしていると、情報の整理がうまくつかないことがよくあります。例えば、たくさんの論文を読み進めていくと、それぞれの論文の著者が勝手にいろいろなことを言っていて、いろいろなものを読めば読むほどに混乱していったり。あるいは、自分の考えをまとめてみようとすると、頭の中で考えがぐちゃぐちゃになり、頭を絞っても同じところをぐるぐるまわっているだけだったり。はたまた、論文を書く際、書くべきことの整理がつかず、何からどう書いてよいかわからなくなったり。私なんか、自分はなんて頭が悪いんだろうと思うことがよくあります。

ただ、こうしたことはノウハウを身につけることでかなり改善するものだと、私は信じています。そんなわけで私は、昔から知的活動のためのノウハウに興味を持ってきました。最近興味を持っているのが、ここで紹介する「マインドマップ」というものです。

マインドマップというのは、イギリス人のトニー・ブザン氏が開発した、一種のノートのまとめ方のようなものです。ノートにまとめることが重要だというのは、実際に多くの人がすでに気づいていることだと思います。冒頭に挙げたような問題も、とりあえず紙やパソコンに書き出してみるというだけで、それなりに改善します。ただ、やり方がうまくないと、その効果が十分に望めないわけです。マインドマップというのは、どうすれば効果的にノートにまとめることができるかを追究したものということができると思います。

私がマインドマップのポイントだと思っているのは、以下の4点です。
・キーワードを書き出す。(文章化せず、単語だけを書き出す。)
・階層的に。(キーワード間に階層性を持たせる。)
・中心から放射状に。(上から下に書くのではなく、中心にテーマを書き、そこからキーワードを放射状に書き出していく。)
・グラフィカルに。(絵を入れたり、カラフルにしたりする。)

マインドマップを理解するためにいちばんいいのは、次の本だと思います。

ザ・マインドマップ ザ・マインドマップ
バリー・ブザン、トニー・ブザン 他 (2005/11/03)
ダイヤモンド社

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開発者のトニー・ブザン氏によって書かれた、いわば正統なガイドブックで、単なるノウハウだけでなく、その背後にある考え方までが書かれています。ただ、マインドマップに初めてふれる人にとっては、前置きが長くてなかなか本題に入らないように感じられるかもしれません。

もっと手っ取り早くノウハウを身につけるには、例えば次のような本があります。

図解・マインドマップノート術 図解・マインドマップノート術
SSIブレインストラジーセンター (2005/04/10)
きこ書房

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とりあえずこの本でノウハウを身につけて自分で試してみた上で、より深く理解するために『ザ・マインドマップ』(最初に紹介した本)を読むという順序がいいかもしれません。(そのようなことがAmazonのレビューのどこかに書いてあったので、私自身そうしてみました。)

『ザ・マインドマップ』の本の帯に「あなたの頭が良くなる!」と書かれていたり、『ノート術』の本のタイトルの最初に「人生に奇跡を起こす」とついていたり、いかにも大げさで、人によっては抵抗をおぼえるかもしれません(私自身がそうです)。ただ、やり方自体はとても簡単なので、とりあえず試してみても悪くはないと思います。上の本を読むと、情報をまとめたり論文執筆の準備をする以外にもいろいろ使い道があることがわかります。その中から、使いやすいものをまず試し、徐々に他の用途に拡大していけばいいでしょう。

なお、『ザ・マインドマップ』の訳者解説に、韓国ではマインドマップが義務教育課程で教えられているとありますが、これはどうも本当のようです。私の知り合いの韓国人は、学校で習ったと言ってました。今まで知りませんでしたが、マインドマップってけっこう有名みたいです。

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