マルソリ・ラボ
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Xu and Sun (2002)
Xu, Yi, and Xuejing Sun (2002) Maximum speed of pitch change and how it may relate to speech. JASA 111.

ピッチ変化における最高スピードはどれくらいかを調べた論文です。これが韻律研究において重要なのは,韻律に対する生理的な制約の一つとして変化スピードの限界があるようだということが言われるようになってきた一方で,実際にその限界がどこにあるかがこれまで明らかではなかったからです。




ピッチ変化の最高スピードの研究としては,これまでOhala and Ewan (1973)Sundberg (1979) があった。彼らの研究は,ピッチ変化をacceleration,fast glide,decelerationの三つの段階からなるものとみなし,そのうちのfast glideに相当する,変化幅の中間75%のスピードを調べたものであった。これに対し,この論文では,中間75%だけでなく,accelerationからdecelerationを含む全体も調べた。なぜなら,実際の言語の韻律に当てはめて考えるとき,変化を最後まで成し遂げるのにどれほど時間がかかるかを考慮する必要があるからである。

変化の全体を捉えるため,この研究では,LHLHのように高低の連続からなる刺激音を被験者に聞かせ,まねさせるという方法をとった。また,中国語話者と英語話者を被験者とした。

主な実験結果(および解釈)

・中国語話者も英語話者も,変化スピードは変わらない。(ただし,変化幅と時間は異なる。)

・下降と上昇では,下降の方が速い。
... Sundberg (1979) と基本的に一致。これは,下降と上昇で異なる筋肉が働くためと考えられる。下降では輪状甲状筋(cricothyroid muscle)と甲状披裂筋(thyroarytenoid muscle)が主に関わるのの対し,上昇では舌骨下筋群(infrahyoid strap muscles)が関わる。後者は,力強いがゆっくりである(Honda 1995)。

・変化の全体にかかる時間は,75%の部分にかかる時間の1.62倍~2.07倍であった。
... 予想以上にaccelerationとdecelerationに時間がかかっている。

# さらに,実験結果をもとに,イントネーションに関する先行研究のデータを再検討しています。例えば,Caspers and van Heuven (1993) など。

以上の実験結果をもとに,これまでのイントネーション研究の結果を見直してみると,変化スピードの限界に近づいていると思われるケースはかなりある。

さらに,実験結果は,中国語のピッチが[high] [low] [rise] [fall] の4つのターゲットからなり,それらが生理的な制約によって変化を受けるというXuのモデルを支持する。ただし,英語やオランダ語など他の言語においては,異なる可能性もある。




今後の韻律研究においては,生理学的な側面が重要になってくるんじゃないか・・・そんなことを感じさせる論文でした。

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中国語中国語(ちゅうごくご)は、シナ・チベット語族に属する言語で、中華人民共和国・中華民国(台湾)のほかに、シンガポールなどの東南アジアや、日本、アメリカ合衆国|アメリカなどの世界各国にいる華僑・華人たちの間で話されている。ギネスブックによれば「現存する
2007/10/13(土) 10:57:14 | アジアで使われている言語
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