マルソリ・ラボ
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正規化が必要になるとき (1)
以前の記事のコメント欄で質問をいただいていた,音声学における正規化(normalization)について,もう少し詳しく書いてみることにします。

正規化が必要になるケースというのは,研究目的によりけりだと思います。そして,そういうケースというのは,さほど多くはないんじゃないかと思います。私の知っているいくつかのケースを挙げてみることにします。

F0の正規化



ピッチを音響音声学的に分析するには,ふつうF0(基本周波数)をみます。このF0,話者によって高さや幅がかなり違います。そのため,複数の話者のF0を扱う上で,F0を正規化するという方法があります。

・藤崎・杉藤(1977:89-90)の方法:F0曲線を縦軸が対数のグラフ上に描き,各話者の平均が同じになるように平行移動する。

・Zスコア:Rose(1987), キャンベル(1997)など。私も以前まねしてみたことがあります(宇都木 2003)。

・もっと簡単な方法:斎藤(2001)は,上の二つの方法を紹介するとともに,別の方法についても述べています。

また,あまり高級なやり方でなはいが,各話者の発話におけるいちばん高いところを100,いちばん低い部分を0として百分率で表すという方法で,ある程度正規化できる。また,この正規化の問題は,声の高さや幅の類似した話者をインフォーマントとして使うことで,いくらかは避けられるようである。


ただ,複数の条件下の測定値を比較するという場合(例えば,「橋」と「端」のF0ピークを比べる,など),話者間の差異の問題は統計によって解決できるので,たいていの場合正規化は必要ないんじゃないかと,私は最近考えています。つまり,反復測定の分散分析を使う(あるいは,原理的にたぶん同じことだと思いますが,「話者」を変量効果要因(random-effects factor)とした多元配置の分散分析を行う)ことで済むのではないかと思うのです。

ただし,複数の話者の複数の発話を平均化したF0曲線を描きたい,というような場合には,正規化した上で平均化した方がいいでしょう。その場合,以下の時間軸の正規化もあわせて行う必要があります。

F0曲線の時間軸の正規化



これは,以前の記事で取り上げたものです(その1その2)。複数のF0曲線を重ね合わせる場合に有用です。また,上に書いたような複数のF0曲線を平均化した曲線を描く場合にも必要となるでしょう。

一方で,時間軸をいじるために形状が変わってしまう点に注意すべきです。必要性があるとき以外は,正規化する必要はないでしょう。

私は,韓国語馬山・昌原方言の論文(Utsugi 2007)でこれを使いました。細かく把握してはいませんが,こういった方法を用いている人は多いんじゃないかと思います。上に挙げた藤崎・杉藤(1977)も使っています。



F0以外については,また後で書く予定です。キャンベル(1997)がやっていることが中心になるだろうと思いますので,次の記事まで待てない方(がどれだけいるかわかりませんが・・・)は,そちらの論文を参考にしていただければと。



参考文献


キャンベル,N. (1997) 「プラグマティック・イントネーション:韻律情報の機能的役割」音声文法研究会(編)『文法と音声』くろしお出版.
文法と音声 文法と音声
音声文法研究会 (1997/05/23)
くろしお出版

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藤崎博也・杉藤美代子 (1977) 「音声の物理的性質」『岩波講座 日本語5 音韻』岩波書店.

Rose, P. (1987) Considerations in the normalization of the fundamental frequency of linguistic tone. Speech Communication 6. 343-351.

斎藤純男 (2001) 「音調の分析」城生佰太郎(編)『日本語教育学シリーズ 第3巻 コンピュータ音声学』おうふう.
コンピュータ音声学 (日本語教育学シリーズ) コンピュータ音声学 (日本語教育学シリーズ)
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宇都木昭 (2003) 「朝鮮語ソウル方言におけるフォーカス発話と中立発話のピッチパターン -修飾語+被修飾語の構造の場合-」 朝鮮語研究会第200回記念国際学術大会, 東京外国語大学. (発表論文集 pp.86-101.)

Utsugi, A. (2007) The interplay between lexical and postlexical tonal phenomena and the prosodic structure in Masan/Changwon Korean. ICPhS 2007 Satellite Meeting: Workshop on "Intonational Phonology: Understudied or Fieldwork Languages," Saarbrücken, Germany.

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音声学に関する最新ブログ、ユーチューブなどネットからの口コミ情報をまとめてみると…
2007/12/03(月) 04:21:20 | クチコミコミュニケーション
正規化に関して,前回の記事のつづきです。持続時間やインテンシティの正規化については,私はあまりよく知らなくて,唯一知っているのはCampbell and Isard (1991), キャンベル (1997) によるものです。これは,前回F0に
2007/12/04(火) 04:01:48 | マルソリ・ラボ
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