マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
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김차균 (2002) 第7章~第10章
김차균 (2002) の第7章~第10章のメモです。第6章までについては、以前の記事にまとめてあります(第1章~第4章第5章第6章)。11章以降はほとんど資料なので、主要な部分はとりあえず読み終えたというわけです。さて、以下はそのメモです。

第7章:表現的な長音節化
この章は強調など語彙的ではない要因によって生じる長音化について扱っています。この本の他の章とはだいぶ異なる内容です。

第8章:文法形態素と声調表示
助詞や用言の語尾がどのような声調を持っていて、体言や用言の語幹とくっつくことで、どのように変化するかを扱っています。ここで書かれていることを私なりに整理しなおしてみます。

例えば、星州方言を例にとってみます。(1)は、平声形に助詞がついたものです。(p.82の(105)より)
(1) a. 밭은 HM
    버리는 MHM
    새드래는 MMHM
  b. 밭에서 HMM
    버리에서 MHMM
    새드래에서 MMHMM
これは、밭 [H]、버리 [MH]、새드래 [MMH]に助詞은/는 [M]、에서 [MM]がついたと解釈できます。これは最も単純なケースです。(ただし、第9章に出てくるように、에서には平声化という現象があるので、典型的な例とはいえないのかもしれません。)

一方、助詞부터がついた場合は、これとは異なります。
(2) 밭부터 MHM
  버리부터 MMHM
  새드래부터 MMMHM
この例は、부터が은/는や에서とは異なり、HMという声調を有していることを示唆しています。

さらに興味深いのは、助詞の声調の現れ方が、名詞の声調形によって異なるということです。하고というHMの助詞が、前の名詞によってどのように変わるかを見てみましょう。
(3) a. 平声形の名詞+助詞: 버리하고 MMHM
  b. 平仄形の名詞+助詞: 애비하고 HMMM
  c. 去声形の名詞+助詞: 이미하고 HHMM
  d. 上声形の名詞+助詞: 대추하고 H:HMM
どういうことかというと、助詞の本来の声調は、平声形の後 (3a) にだけ現れ、それ以外の (3b)~(3d)ではMMのタイプの助詞と同じになってしまうわけです。つまり、中和が起きるわけです。

用言の語幹+語尾の場合も基本的には同じです。

第9章:第一成分の平声化
基底で第一音節が平声以外であるものが、ある種の環境で平声に変わるという現象を扱っています。例えば、몸は去声であるにもかかわらず、에、에서のように에ではじまる助詞がつくと平声に変わるのだそうです。

他にもいろいろなケースがありますが、もう一つ興味を持ったのは、語幹が1音節からなる上声の用言の多くに起きる平声化です。この種の用言は、母音で始まる語尾の前で平声化するのだそうです。例えば、次のような例があります。
(4) a. 삼는다 LMM(固城) H:MM H:HM(星州) (訂正:2006年6月4日)
  b. 삼았다 HMM(固城) HMM(星州)
ここでは、(4b)で平声化が起きています。

第10章:用言の声調変動
この章で扱われているのは、用言の声調形が後に来る語尾によって変動するという現象についてです。
10.2 1音節平声用言
この種の用言には、声調が変動するものとしないもの(固定)があります。固定のタイプは、(語幹が)子音で終わるものの大部分と母音で終わるものの一部だそうです。この節の最初のところで変動と固定を具体例を挙げて比べたあと、後半では固定のタイプの例が列挙されています。変動のタイプは、14章で改めてまとめられているようです。
10.3 1音節変動上声用言
1音節上声用言の大部分は、語尾が母音ではじまるときに平声化します。(これは第9章でも述べられていたことです。)
10.4 1音節固定上声用言
これはまれな例だそうです。具体例が列挙されています。
10.5 1音節去声用言
このタイプの用言は例外なく固定であるが、星州方言において母音ではじまる語尾がつくとき、縮約に伴って変動が起きることがあるそうです。
10.6 多音節用言
3音節以上:複合語を除けば変動はない。
2音節:少数の例外を除けば変動はない。


最後に私の感想。
私が慶尚道方言に関して研究したいと思っているのは、文レベルで生じる韻律的現象です。ただ、文レベルのことを扱おうとする場合、助詞や用言が出てくることになるので、これらのアクセント(韓国の用語で言えば声調)について理解しておく必要があります。なかなか複雑でやっかいだな、というのが率直な感想です。

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最近読んだ以下の論文について、忘れないうちにここにまとめておきます。羅聖淑 (1974) 「韓国語大邱方言の音韻 ― アクセントを中心に ―」『言語研究』44, pp. 1-44.この論文は、大邱方
2006/06/08(木) 23:40:35 | マルソリ・ラボ
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