マルソリ・ラボ
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Browman and Goldstein (1992)
C. P. Browman and L. Goldstein (1992) Articulatory phonology: An overview. Phonetica 49, 155-180.

有名な調音音韻論(articulatory phonology)に関する論文。聴講している授業のリーディングの課題に指定され,前から読みたいと思っていた論文でもあったので,全部読んでみました。

かなり苦労してなんとか読みましたが,それでもちゃんと理解できているかどうか不安です。以下に内容を簡単にまとめてみましたが,もし間違いなどありましたらご指摘を。




調音音韻論においては,ジェスチャー(gesture)が基本単位となる。これは,調音器官をどう動かすかを意味する。例えば,両唇を狭める,舌背を持ち上げる,など。これは一見,素性(feature)と似ているが,時間・狭めの程度・狭めの位置に関する実質的な情報をはじめから有しているという点で,素性と異なる。また,素性のようにspreadingをすることもなく,複数のセグメントにまたがって現れるジェスチャーは,はじめから複数のセグメントにまたがったものとして指定される。

調音音韻論において,音韻表示に相当するものは,gestural scoreである。gestural scoreにおいては,5つのtract variableのセットに関して,それぞれジェスチャーが指定される。この5つとは,velum, tongue body, tongue tip, lips, glottisである。この5つのセットのうちのいくつかは,さらに複数のtract variableから構成される。例えば,lipsはlip protrusionとlip apertureからなる。このようにして指定されたgestural scoreにもとづき,task dynamicsというメカニズムによって調音器官の軌跡が描かれる。そしてこれが実現されたものが出力形としての音声になる。

これまで同化や削除として捉えられてきた現象は,調音音韻論ではgestural overlap(つまり,複数のgestureの時間軸上での重なり)やある種の環境でのgestureの弱まりによって説明される。例えば,発話速度の速い発話で"perfect memory"のtが削除される現象は,後続するmのジェスチャーと重なってtが聞こえなくなったのだと解釈される。実際,調音器官の動きをみた実験において,tのためのジェスチャーが残っているという結果は,この解釈を支持する。

音節のような,nodeによって複数のジェスチャーをまとめた単位というのは,調音音韻論では認めない。音節に関わるとされてきた現象は,gesture間のphaseの問題とされる。つまり,あるジェスチャーの終端と別のジェスチャーの始端がそろうように並んでいるか,終端と終端がそろうように並んでいるかという違いによって捉えられる。




だいたいこんなところでしょうか。とにかく,生成音韻論とは根本的に異なる理論だと思います。

調音音韻論がレキシコンの側のことをどう考えているのかはよくわかりません。gestural scoreがそのままレキシコンに記録されているのでしょうか?また,論文の中ではpostlexicalな現象を取り上げて解釈を示していますが,音韻論におけるもう一つのレベル ― lexicalなレベル ― の現象はどう捉えるのでしょう?

あと,階層性の問題。韻律研究ではよく,音節,韻律語,韻律句みたいに音声を階層的に捉えようとしますが,こういう考え方は調音音韻論では否定されているということでしょうか・・・。

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