マルソリ・ラボ
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Donohue (1997)
Mark Donohue (1997) Tone systems in New Guinea. Linguistic Typology 1. 347-386.

ニューギニアの諸言語のトーンについて紹介しつつトーンの類型論を論じています。以下は私なりにまとめた要旨。



トーンは類型論的に三つにわけることができる。

1. Syllable-tone: 音節をドメインとしてトーンが指定される。したがって,音節数が増えるほど可能なパタンが増す。ニューギニアの言語では,Telefol語など。他の例としては,北京語。

2. Word-tone: 語をドメインとしてトーンが指定される。したがって,音節数が増えても可能なパタンは基本的に変わらない。ニューギニアの言語では,Kairi語など。他の例としては,Mende語,上海語。

3. Pitch-accent: 語のどれかの音節にアクセントが指定される。それによって他の音節のトーンも自動的に決まる。ニューギニアの言語では,Una語など。他の例としては,日本語(東京方言)。

これらは連続的であり,中間的な言語もある。
例えば,Fasu語は,ストレス音節がHになる型とLになる型とがある。Pitch-accentとword-toneの中間のようである。

また,(ニューギニアの言語ではないけれど)Fuzhou語(福州語?)は,syllable-toneとword-toneの中間である。(複合語の現れ方において,上海語のように単純にいかない。)



・・・こんな感じの内容でした。おもしろい論文でしたが,以下ちょっと気になった点を。

この論文,もとはといえば,斎藤(2001)の中で「早田輝洋と同様の結論に到達している」と書いてあったので,気になっていたものです。(ちなみに早田輝洋の結論というのは,早田(1999)をはじめとする早田先生の一連の著作の中で展開されているもの。)

確かに,Donohueのword-toneと早田先生の「語声調」,よく似てます。というかこれは,例えばKenstowicz(1993)とかGussenhoven(2004)に出てくるようなword melodyとはどう違うのでしょう?

それと,中間的なケースとして出てくるFasu語ですが,スウェーデン語と似ていると思います。実際本文中で,同じタイプとしてスウェーデン語が挙げられています(p.379)。最近はやりの言い方で言えばおそらく,「Fasu語にはH*とL*という2種類のlexical pitch accentがある」ということになるのでしょう。こういう見方をした場合,中間的でもなんでもなく,pitch-accentの一種になるのかと思います。

別の意味で中間的と言えるのは,大阪方言のように,(日本の伝統的な言い方をすれば)式とアクセント核の両方があるタイプの方言でしょう。早田先生はたしか,語声調とアクセントの両方があると見ていたはず。

で,最近しったのですが,原口先生なんかは,大阪方言は基本音調メロディーが2つあると考えるようです(原口 1995)。このアプローチでいくと,スウェーデン語も大阪方言と同じように基本音調メロディーが2つあることになるんじゃないかと。

スウェーデン語と大阪方言,見方によっては全然ちがうタイプですが,別の見方をすると似たような言語と言えるのかも。(別に原口先生の味方をしているわけではなくて,ただ,理論的な分析の仕方次第で類型論的分類っていろいろ変わるものだなあと。)



参照文献(上の文に出てきた順です)
# 概説書ばかりですね・・・。文献をさかのぼっていけば,もっと専門的な論文にいきつくはずです。

斎藤純男(2001)「音調の分析」 城生佰太郎(編)『日本語教育学シリーズ<第3巻> コンピュータ音声学』 おうふう.

コンピュータ音声学 (日本語教育学シリーズ)コンピュータ音声学 (日本語教育学シリーズ)
(2001/01)
城生 佰太郎

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音調のタイポロジー音調のタイポロジー
(1999/01)
早田 輝洋

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Phonology in Generative Grammar (Blackwell Textbooks in Linguistics)Phonology in Generative Grammar (Blackwell Textbooks in Linguistics)
(1993/09)
Michael Kenstowicz

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The Phonology of Tone and Intonation (Research Surveys in Linguistics)The Phonology of Tone and Intonation (Research Surveys in Linguistics)
(2004/09/30)
Carlos Gussenhoven

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音韻論 (現代の英語学シリーズ)音韻論 (現代の英語学シリーズ)
(1995/01)
原口 庄輔

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2008/06/04(水) 20:08:49 | 気になるワードを詳しく検索!
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