マルソリ・ラボ
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アクセント句とは何か (2)
2年ほど前に「アクセント句とは何か?」という記事を書きました。簡単に要約すれば,「アクセント句」(accentual phrase)という用語には,Pierrehumbert and Beckman (1988)によるものとHayata (1973)によるものの二通りがあるようだ,というものです。

最近研究室の整理をしていたら以前入手したHayata (1973) が出てきたので(書類の山の中に埋もれていました),該当箇所を読んでみました。
# ちなみにこの論文,いろいろなところでHayata (1971) として引かれているのですが,1973年が正しいようです。

要するにこういうことのようです。


アクセント句:##__##に囲まれ,その内部に##を含まない単位。


#の分布は統語構造の中で決まります。名詞+助詞の場合,両者の間には#が一つしかないので,アクセント句一つになります。伝統的な用語でいうところの文節とほぼ一致すると思います。

これ,Pierrehumbert and Beckman (1988) のアクセント句とはかなり違いますね。彼らは実際の音調の現れ方から定義するわけですので。例えば,「アマイ マメ」(甘い豆)は,Pierrehumbert and Beckmanの定義にしたがえば,「アマイ」と「マメ」の間にピッチの谷(L%)があればアクセント句2つで,なければアクセント句一つとなります。一方,早田先生の定義では,どう発音されるかに関わらず,常にアクセント句2つとなるんだろうと思います。

というわけなので,論文中に「アクセント句」という用語が出てきた場合,どちらの意味で使っているのか注意する必要がありそうです。私がソウル方言に関して言う場合には,以前の記事にも書きましたが,Jun (1993) と同じです。Junのアクセント句は,Pierrehumbert and Beckman (1988) と同じように,実際の音調から判断します。したがって,同じ文でも発音によってアクセント句形成のパターンはいろいろありえます。一方,日本で発表された慶尚道アクセントの論文の中で「アクセント句」という用語が出てきたら,たいていの場合,早田先生の定義のほうじゃないかと思います。

参照文献

Hayata, T. (1973) Accent in Old Kyoto and some modern Japanese dialects. 『言語の科学』第4号.

Jun, S.-A. (1993) The phonetics and phonology of Korean prosody. PhD dissertation, Ohio State University.

Pierrehumbert, J. and M.E. Beckman (1988) Japanese tone structure. Cambridge, MA: MIT Press.


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