マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
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Phonetic segmentation
音声学における音響分析の大変さは,全く経験の無い人からは理解されにくいかもしれません。録音をとったら,あとはパソコンのソフトを使うとたちどころに結果が現れると思っている人もいるかもしれません。実際には全くそんなことはなくて,録音をとった後には様々な作業が待っています。

私が修士論文を書いていた頃は,音響分析ソフトとにらめっこしながら,測定箇所を一つ一つ見つけては計測し,記録をしていました。博士論文を書く頃にはちょっと進歩し,音響分析ソフト(私が使ったのはPraat)のスクリプト(簡易プログラミングのようなもの)機能を利用し,作業をある程度自動化するようになりました。

ただ,音響分析の作業において,重要でありながらどうしても自動化できない部分があります。それは,phonetic segmentation(いわゆる「セグメンテーション」),すなわち,音声資料中の分節音境界を画定するという作業です。たとえば,「おなかすいた」という発話の音声資料があったときに,o,n,a,k,a・・・という分節音間の境界が時間軸上のどこにあるかを判断していくわけです。全ての音声学的な音響分析においてセグメンテーションが必要なわけではありませんが,多くの分析において部分的にせよセグメンテーションの作業が伴います。

このセグメンテーションが曲者なのです。そもそも音声は時間軸を連続的に変化するものであって,明確な境界というものは存在しません。それでも測定のための便宜上セグメンテーションをするわけですが,そのためには基準が必要となります。

意外なことに,セグメンテーションのマニュアルというものは,これまでほとんどありませんでした。私が知っているのは以下の二つですが,どちらも概略的な話にとどまっています。


  • Turk, A., Nakai, S., & Sugahara, M. (2006). Acoustic segment durations in prosodic research: A practical guide. In S. Sudhoff, D. Lenertova, R. Meyer, S. Pappert & P. Augurzky (Eds.), Methods in empirical prosody research (pp. 1-27). Berlin: Walter De Gruyter.

  • 藤本雅子・菊池英明・前川喜久雄 (2006) 「分節音情報」 『国立国語研究所報告124 日本語話し言葉コーパスの構築法』 国立国語研究所.



そのほか,公開されていない内部用のマニュアルはいろいろあるかもしれません。また,職人芸的に人づてで伝えられているケースが多いかもしれません。(そのために,いろいろな「流派」がありそうです。)

そんな中,画期的かもしれない本の紹介がPhoneticaに出ていました。

Phonetica > Book Notice: Principles of Phonetic Segmentation

紹介されているのは以下の本。まるまる一冊,phonetic segmentationについて扱っているようです。

Principles of Phonetic Segmentation

Pavel Machač & Radek Skarnitzl (2009) Principles of Phonetic Segmentation. Prague: Epocha Publishing House.

私は上のPhoneticaの記事を読んだだけで,実際の本を手にしたわけではないので,本の紹介は書けません。紹介記事を読む限り,本には英語とチェコ語の例しか出てこないようなので,日本語を分析する人にとってどれだけ役に立つかはわかりませんが・・・ひとまず本を早く入手したいと思います。(・・・でも,チェコで出版された本は簡単に入手できるのだろうか・・・?)

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ところで,セグメンテーションを自動化するという技術も実は存在します。ただ,音声学の研究において必要とされるような精度は,現状では残念ながら得られないように思います。今後技術が発展すればよいのですが・・・


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2012/05/22(火) 12:18:12 | | #[ 編集]
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