マルソリ・ラボ
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久保 (1993)
久保智之 (1993) 「疑問詞のスコープを表わす高く平らなピッチ ― 朝鮮語釜山方言・晋州方言についての報告 ―」 『アジア・アフリカ文法研究』 22,東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所.


久保 (1993)


この論文では,慶尚南道の2つの方言 ― 釜山方言と晋州方言 ― について,そのアクセント体系,複合語アクセント,用言のアクセントをまとめたのち,疑問詞疑問文のピッチの特徴を論じています。

釜山方言はアクセント核(この論文の用語では「アクセント」)を持つ方言のようです。これまでに私が読んだ慶尚南道東部の諸方言に関する論文と比べてみても,それらとかなり似た体系を持っているようです。複合語アクセント規則についても,慶尚南道の他の方言や慶尚北道の方言と似ています(例えば,羅聖淑 1974による大邱方言とか)。

一方,晋州方言は,4つのトーンからなる体系を持っているとのこと。早田輝洋氏の用語で言うところの「語声調」ですね。久保論文では,古い世代の晋州方言を扱った大江 (1977)との違いにも言及しています。「低中中…」の型が「低高低…」の型に合流しているとのこと。きっとこれは世代差なのでしょう。複合語アクセントについては,常に前部要素の型が全体の型になるようで,釜山方言とは違っています。

さて,この論文のメインは疑問詞疑問文のピッチです。例えば,釜山方言を例にとると,
(1) 김치 물래? (キムチ食べる?)
はピッチが [HL HL] となるのに対し,
(2) 무슨 김치 물래? (何のキムチ食べる?)
のように疑問詞がつくと, [LHHHHL] というように,疑問詞の第2音節以降が高く平らなピッチになるという話です。つまり,単語本来のアクセントが消えてしまうわけです。
(なお,上の例文は釜山方言です。標準語では上のようには言いません。)

この現象,私自身も晋州に行ったとき(以前の記事に書きました)に実際に耳にしました。また,研究室にいる慶尚南道出身の人の発音でもそうでした。韓国で出た論文でも,金次均氏が指摘しています。例えば,
・김차균 (1970) 경남 방언의 성조 연구. 한글 145, 109-149.
(昌原方言を対象としています。)
・김차균 (1980) 경상도 방언의 성조 체계. 서울: 과학사.
(私は未見ですが,久保論文の中で言及されています。)
など。

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