マルソリ・ラボ
言語学、音声学、日本語、韓国語など。
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韓国滞在を振り返る (4):研究のこと
「韓国滞在を振り返る」の4番目です。これまでの記事はこちら(123)。今回は研究について。

以前の記事で書いたように,これまでは自分自身の研究に関して物足りなさを感じていました。限られた時間と狭い知識。そのために,手っ取り早くまとまるような研究テーマを選びがちだったと思います。でも,本当はもっと別の方向に広げていきたい思っていたわけです。だから,フェローシップが始まる時点で考えたのは,十分な時間を手にした今,そういった研究に踏み出そうということでした。

具体的にどういう方向の研究を考えていたというと… やや専門的になりますが,次のようなことです。(ちなみに,私の研究内容をもう少しかみくだいて書いたものが,別のページにあります。参考までに。)

***

私の主たる研究テーマは,韓国語ソウル方言の韻律です。これまでは,音響分析によって主に基本周波数(音の高さに対応するもの)を調べるとともに,そのパターンを理論的に考察してきました。新たな研究として考えていたものも,この延長線上に位置づけられるものです。これには大きく分けて2つあります。

1つは「離散性」(discreteness)の問題。離散性とは何か,なぜ離散性を検討することが重要なのかについては,かなり専門的な話になってしまうので,ここでは省略します。ともかく,離散性を扱うには単純な音響分析だけでは不十分で,もっと別のアプローチが必要になります。でもそれには,別のタイプの実験を方法論から身につける必要があるわけです。

もう1つは他の方言。特に慶尚道方言。慶尚道方言は日本語に似た示差的アクセントを有する方言として有名で,そのためこの方言の韻律に関する先行研究は山ほどあります。でも,私が知る限りその大半は語のレベルからのものでした。文のレベルでは未発見の興味深い現象がいろいろあるのではないか ― いわば研究テーマの宝庫ではないかと思ったわけです。さらに言えば,そういった現象を通じ,間接的にソウル方言の研究を見直すことになるのではないかとも思いました(これは以前の記事にも書きました)。ただ,私自身これまで慶尚道方言についてほとんど知識を持っていませんでした。研究を行うとすれば,ゼロに近い状態からのスタートであったわけです。

***

そんなわけで,この2つのテーマを研究することに決め,韓国に渡りました。それで,実際にやってみてどうだったかというと:

離散性:6月に具体的な準備をはじめ,6月下旬から8月上旬にかけて被験者を呼んで実験を実施。10月に韓国の学会で発表しました。結果は面白いといえば面白いものの,予想外のもの。第二弾以降が必要ですが,そこまではできず。

慶尚道方言:慶尚道出身の大学院生と5月に勉強会をスタートさせ,文献の読み込みを開始。勉強会のメンバーと簡単な実験を考え,8月中旬に実験し,10月に日本で発表。簡単な実験のはずが,案外すっきりとはいきませんでした。さらにいろいろな文献を読み,12月に個人研究として別の調査を。この結果がまとまるのは,まだ先になると思います。この方言に関しては,山ほどあるテーマのうちほんの少ししか実際に調査できませんでした。ほぼゼロからのスタートだったことを考えれば,これは仕方ないのかもしれません。

全体として,当初考えていた最低限のことはできたと思います。それぞれについて学会発表もしました。ただ,いろいろできるのではと考えていたわりには,たいした成果は挙げられなかったと思います。これについて自分なりに理由を考えてみました。

・テーマがこれまでと違う
2つのテーマとも,これまでとはかなり違うものでした。そのため,基礎を学ぶことから始めなければならず,実際の研究に辿りつくまででも時間がかかったわけです。

・テーマが難しい
そもそも,簡単に結論が出るようなテーマではないのかもしれません。良い成果を出すには,地道にやっていくしかないのでしょうね。

・原稿執筆・発表準備に時間がかかる
韓国に来てからは,ほとんどの論文を英語で書きました。日本語で書けば韓国の多くの研究者に読んでもらえないし,韓国語で書けば日本の(韓国語を専門としない)研究者に読んでもらえないからです。でも,英語は得意なわけではないので(高校時代はいちばんの苦手科目でした!),かなり時間がかかったわけです。さらに,口頭発表を英語や韓国語でする機会もかなりあったので,それにも時間が・・・。

・他の仕事に時間をとられる
自分で計画していたこと以外に,原稿執筆や発表の依頼が来たりします。昔はこちらがやりたくても何の話も来なかったので,依頼が来るというのはうれしいことです。しかも,内容的にも魅力的な仕事が多いです。そんなわけで,頼まれた仕事は多くの場合,よろこんで引き受けています。ただ,それに伴って,その仕事に時間をとられ,中心的な研究テーマに割く時間が減っていくのもまた確か。

どれも仕方のないことですね・・・。結論として悟ったのは,「9ヶ月はとても短い」ということです。

さて,「韓国滞在を振り返る」はひとまずこれで終わりにしたいと思います。今は日本に帰国し,次のための準備をしているところです。「次」の予定については,知っている人は知っていると思いますが,このブログではまだ書かないことにしたいと思います。

テーマ:研究者の生活 - ジャンル:学問・文化・芸術

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