マルソリ・ラボ
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Praat: 時間を正規化したF0曲線
時間を正規化した(time-normalized)F0曲線というのは,例えば「アメ」という発話においてa,m,eが時間軸上で同じ長さになるようにして示したF0曲線のことです。当然本来のF0曲線とは違ってしまうのですが,それでも敢えてこういうことをする必要が出てくるのは,例えば,2種類のF0曲線を同じ図の中で比べるような場合です。つまり,「雨」と「飴」のF0を比較するような図を作りたい,というときに有効なわけです。

「雨」と「飴」のF0を比べる図をつくるための古典的な方法は,各モーラからそれぞれ一点を選んで測定し,図をつくるというものです。ただ,これだと曲線の形状がわかりません。別の方法は,「雨」と「飴」のそれぞれについてF0曲線を描かせ,その図を2枚並べるというものです。でも,どうせなら1枚の図の中で重ね合わせたほうがわかりやすいです。では,単純に重ねたらどうかというと,個々の発話によって発話速度や持続時間調整にバラツキがあるために,きれいに示せないことがあります。(「雨」/「飴」のように短い発話ではあまり問題がないのですが,長めの発話になった場合,かなりバラツキがでてきます。)そこで,時間を正規化したF0曲線が必要になってくるというわけです。
(ただし,これらの方法は,一概にどれがよいとは言えません。どの方法を用いるかは目的によりけりです。)

時間を正規化したF0曲線は,Praatのスクリプトを利用して描かせることができます。私は,Bert Remijsenが公開しているスクリプトを利用しようかと思っていました。そんなことをBert(ここエディンバラにいる)に話したら,Yi Xuがすごいスクリプトを公開していると教えてくれました。

Bert Remijsenのスクリプト


こちらのページの9番からダウンロードできます。
本人が書いているように,これはあくまでも参考例であって,実際に使うには自分の用途にあわせて修正する必要があります。(そのためにはもちろん,Praatスクリプトの知識が必要です。)

Yi Xuのスクリプト


こちらのページからダウンロードできます。非常に完成度の高いスクリプトで,スクリプトの中身を理解していなくても使えます。

使い方は,

・スクリプトをダウンロードして,スクリプトと音声ファイルを同じフォルダの中に入れる。
・Praatからスクリプトを実行。
・TextGridのウィンドウでセグメンテーション(分節音の境界を指定する)する。
・Continueを押す。
・フォルダの中に.timenormf0というファイルが作られるので,これを何らかのグラフを作るソフト(例えば,Excel)で開き,グラフを作る。

大まかに言うとこんな感じです。(詳しい使い方はスクリプトの冒頭部分に書いてあります。Yi XuのウェブページのFAQも参考になります。)



ただ,Yi Xuのスクリプトはあまりにも「完成されている」ので,自分の目的にあわせて応用したい場合にはやりにくいかもしれません。その場合,むしろBert Remijsenのスクリプトをベースにして,自分でスクリプトを書いた方がやりやすいかも。

コメント
この記事へのコメント
セグメントの正規化の方法をお教えいただけますか

例えば、発話における母音などセグメントの正規化の方法ををお教えいただけますか
2007/10/26(金) 03:21:43 | URL | sai #-[ 編集]
母音の正規化というのは,話者正規化のことでしょうか?
2007/10/26(金) 20:12:05 | URL | A. Utsugi(管理者) #LBBrlPtc[ 編集]
早速お返事いただいてありがとうございました。
私の言った「正規化」は話者正規化ではありません。時間を正規化したF0曲線と似ているように、例えば、(男女老若を問わず)多数の話者が発話した文の中のある特定の母音の持続時間を研究するとき、個々の発話によって発話速度などが違いますので、正規化しなければならないと思いますが、そのような「正規化」は時間を正規化したF0曲線の場合と同じように処理してもいいですか。複雑な問題だと思いますが、それに関する文献をご紹介くださってもいいですので、どうぞよろしくお願いします。
2007/10/27(土) 07:33:49 | URL | sai #-[ 編集]
上の記事で書いた「時間を正規化したF0曲線」というのは,複数のF0曲線を比べるために,便宜的に各セグメントの持続時間を等しくしてしまうというものです。お尋ねのケースは持続時間そのものに関心があるのだと思いますが,その場合は使えません。

お尋ねのケースに適した正規化の方法は,私にはちょっとわかりません。

ただ,具体的な研究内容がわからないので何とも言えませんが,そもそも正規化をする必要があるのかどうかから,考え直してみてはどうでしょうか?ある母音について,二つ以上の条件における持続時間の違いを調べるのであれば,それぞれの条件に関して複数回の測定をし,統計的検定をかけるのが一般的だと思います。反復測定にすれば,話者間の差異は問題にならなくなるでしょう。
2007/10/28(日) 19:08:54 | URL | A. Utsugi(管理者) #LBBrlPtc[ 編集]
ご丁寧にお教えくださって、ありがとうございました。
ご丁寧にお教えくださって、ありがとうございました。

おかげさまで、母音の持続時間の違いを調べるために正規化が要らないということがわかりました。

で、音声学の研究において、F0以外の場合は、正規化が必要なのは、あるかお教えいただけますか。

お手数をかけまして、どうもすみません。
2007/11/04(日) 09:42:21 | URL | sai #-[ 編集]
遅くなりましたが,新しい記事の中でちょっとまとめてみました。
http://utsakr.blog65.fc2.com/blog-entry-125.html
2007/11/11(日) 23:01:53 | URL | A. Utsugi(管理者) #LBBrlPtc[ 編集]
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前回の図につづき,今度はMetaPostで時間を正規化したF0曲線を作ってみました。以下に示すのがその図です。下のGIFファイルはたいして綺麗じゃありませんが,もとのEPSファイルはかなり綺麗です。なお,時間軸の正規化について
2007/06/16(土) 02:08:50 | マルソリ・ラボ
時間を正規化したF0曲線をつくるためのPraatスクリプトについて以前の記事で書きましたが,自分でもつくってみました。以前に紹介した二つのスクリプトは,図そのものは別のソフトで作らなければなりませんが,私が今回作った
2007/09/15(土) 22:09:37 | マルソリ・ラボ
以前の記事のコメント欄で質問をいただいていた,音声学における正規化(normalization)について,もう少し詳しく書いてみることにします。正規化が必要になるケースというのは,研究目的によりけりだと思います。そして
2007/11/11(日) 22:57:59 | マルソリ・ラボ
正規化に関して,前回の記事のつづきです。持続時間やインテンシティの正規化については,私はあまりよく知らなくて,唯一知っているのはCampbell and Isard (1991), キャンベル (1997) によるものです。これは,前回F0に
2007/12/04(火) 04:01:47 | マルソリ・ラボ
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